仕事ときどき女の子

しがない自営業です

真夜中の出来事日記

最近は、自社サービス以外にもやってる、ある受託案件が大詰めで忙しい。

実装終わったっていうから検証フェーズに入って、テスターを2人アサインしたというのに蓋を開けたら全然実装が終わってない。出来るところからと、だましだましテストを開始しつつ、エンジニアと締切を約束しては破られ、進捗を聞いては5時間後の夜中12時に終わりませんと報告を受ける、ということを繰り返し数日。ブチギレもせず、淡々と、もうそんなこといってるフェーズではないということと、いつまでに終わらせるかを自ら言わせ、客には頭を3回下げた。

とはいえエンジニアを全面的に責めるわけにはいかない。そういうエンジニアだと知ってるのに見越してスケジュールを組めなかったわたしのスキル不足だ。いつもはへこんで立ち直れないところだが、今回は何がそうさせるのか、Evernoteを立ち上げ、学んだことを箇条書きでまとめた。「次スケジュールを立てる時に確認すること」というタイトルを付けて保存した。

 

エンジニアもテスターも夜に対応する。エンジニアは夜型だからだし、テスターは海外在住だからだ。昼間は自社サービス、夜は受託。そういう生活だ、最近は。

その中の1人のテスターは、ものすごい華やかな経歴を持った女性だった。「ウケがいいでしょ」なんて笑いながら楽しそうにそのときのこと話していた。業界人としてはものすごく興奮した。

社長とのミーティング中、そういえば、なんて言ってその話をしたら興味なさそうにふーんとかへーそうなんだーとつぶやいた。女の話を聞かない男。今はそれどころではないしもっと大きなことを企む男。私の気持ちは社長の真横を通過していく。

 

昨日の真夜中、ついにスケジュールが崩壊してリアルに頭を抱えて打開策を頭に組み立てている最中に、社長から電話があった。

 

ある受託案件が炎上して、デザイナーが連絡を絶ったあとブチ切れたという。そのデザイナーはうちの自社サービスもデザインしてくれているデザイナーで、とてもブチ切れるタイプの人ではなかったし、その受託案件でもいろいろ気遣ってくれて進捗していた(わたしも途中まで関わってたからよく知ってる)。自社サービスのデザイン業務を全面ストップさせてこの受託案件をやってもらってた。

でも、そもそもその案件自体、燃えるな…という要素ばかりだった。クライアントは意見をコロコロ変えるし、決まるものも決まらず、でもリリース日は変えられない、という具合。ついには、案件の趣旨自体が変わる自体に発展して、不眠不休で作ったデザイン全部がおじゃんになってしまって、それがデザイナーをブチ切れさせたきっかけになったらしい。同情しますわ。

本当は、このデザイナーを受託案件にぶっこむから自社サービスのデザイン止めるって判断されたときはちょっとイラッとして、「この案件なんで受けるんですか?旨味あるんですか?社長は自社サービスどうしていきたいんですか?」と言ったりして、逆に社長をイラッとさせた気がする。でも、今となってはわたしの言ってることの意味がわかってくれただろうか。

 

社長はそのことを共有したくて電話してきた。もう自社サービスのデザインもやってもらえないかも、と。どうしよう、でもしょうがないよね、決めてもらうしかないよね、どうしよう、でも…と中身すっかすかの堂々巡りを独り言のように喋っていた。

一通り独り言を言い終わったあとは、もっとしっかりしなきゃいけないんだよね、クライアントにNOって言わなきゃダメなんだよね、優しい社長なんていらないんだよね、とお葬式モードに変わっていった。

 

いつも通り黙って聞いていた。

わたしは社長になったことないから何が正解かなんてわからないし、社長の会社なんだから社長の好きにすればいいと思ってる。だからアドバイスなんてしない。

ただ、社長がわたしを裏切るようなことをしない限りは、きっと社長側の人間でいると思う。その関係があれば、会社がどうなってもどうにかなると思う。エンジニアが全員逃げても、会社の金が横領されても、億の金を稼げる男がそこにいれば無敵ではないか。

デザイナー、逃げちゃっても別にいいですよどっちでも、とだけ言っておいた。そうなの?と聞かれたけど、そうですね、としか返せない。優秀な人だったけど、会社ってその時々にいるべき人、いなくなる人の波があるから、それに飲み込まれただけの話だと思います、と付け足した。そっか、とだけ言って社長は終電で、別の案件のクライアントのオフィスがある街へと向かっていった。

 

変な話だけど、黒執事でファントムハイヴ家が「女王の番犬」であったようにわたしは「社長の番犬」なんじゃないかと思う。冗談で言ったら、「ちょっと前に言われてたら純粋に嬉しかっただろうけど今言われたら意味深すぎる」って返された。だよね。

BOSSのCMで、25年間勤めた議員を辞める時、秘書が「いい時も悪い時も、あなたのそばにいました」と言うシーンがあるのだけど、多分こういうポジションなんだろうなと。

 

電話を切ったあと、エンジニアからの返信を待って、真夜中3時までPCを眺め、寝付けず朝になり、それが今日。

そして今日は転院先の初診にかかる予定で会社は休みの扱いになって、様々なミーティングを調整してきた。

のに。起きたら体調がすこぶる悪くて、客に謝罪文を送りタスク確認をしあれこれしてたら初診受付時間が終了し、少しだけ仕事をしつつ、平日昼間に仕事をせず星野源のLive Blu-rayを見ながらこの記事を書いていることに気持ち悪さを感じている普通の木曜日なのであった。〜Fin〜